推手の戦略 セミナー
推手の価値 推手の段階 推手の五行 推手の戦術

推手の価値
「手」は道具の製作から操作にかけて人類の智能の表れであり、技術や思考のレベルを示す「外の脳」である。
武術に於いて「手」は、防禦 (遮る、断ち切る、抑える…)、打撃(突く、叩く、切る、抉る…)、制御(掴む、握る、投げる…)などの戦闘能力と、刀剣、棍槍、銃器などの物体を操作する応用能力が含まれる。
特に漢字圏において「手」は武術の代名詞として使用されている。例えば、琉球唐手の那覇手や首里手、泊手など、日本の空手道や捕手術或いは組手などが「手」の言葉を用いる。また、「手」は「掌と「拳」の二大ファクターによって構成され、「掌」には八卦掌、劈掛掌、綿掌、穿掌、鉄砂掌などの流派があり、「拳」に関しては○○拳、××拳など中国拳法の全般に用いられる。更に、韓国の?拳道 (Taekwon do)や李小龍の截拳道(Jeet kune do)などの様式にも使われている。

「手 (掌・拳)」が人間にとってとても大切であるにも関わらず、現在の武術や格闘技における「手(掌・拳)」の使用法は極めて限定的なものである。打撃の場合、握り固めた拳や掌のまま、直接的かつ一方的に物体を叩き、投拿の場合も防御なしで直接的に相手を掴み、握ろうとする。同じ「手」であっても防御、打撃、投拿の一貫した「手」の応用が出来ていない。

一般では物体への交叉接触は「手」を用いる。武術では「接触連絡」のことを○手、×手などと称する。例えば、太極拳の推手、形意拳の散手、八卦掌の盤手、南拳の橋手、北拳の搭手、詠春拳は黐手、鶴拳の水火手、 意拳の散手、 蟷螂拳の蟷螂手、 剛柔流空手の掛手と呼び、ジークンドウ、クラブマガ、シラットなども同様な技法を用いる。そして、相撲、合気道、柔道、ソウカク、レスリング、サンボ、柔術など投拿系の全般には「接続連結」の練習法がある。

戦闘は遠・中・近距離の順番で行われる。戦闘は距離の物理空間によって、その戦術体系や技術形態が異なる。
     遠距離:戦術‐直接打撃、戦法‐攻防択一、技術‐点線技法。要素‐速度、威力、組合せ。
     中距離:戦術‐間接攻略、戦法‐攻防択一、技術‐交叉技法。要素‐密度、角度、歩法。
     近距離:戦術‐投拿制御、戦法‐攻防相乗、技術‐螺旋技法。要素‐平衡、慣性、体法。

距離(間合):遠距離:手足が相手に届かない距離。中距離:手足が相手に届く距離。近距離:手足が相手に接触できる距離。

相手との接触には直接と間接な手段がある。直接的に目的を達せるに越したことがないが、このような一方的な単純行動には無理がある。相手の両手を制圧し間接的に目的を果たすことは、包括にして建設的な行動展開に繋がる。

直接打撃とは、ボクシング、空手道、テッコンドウなどに見られる打撃形態のことである。
直接打撃は、ジャブ、ストレート、フック、アッパや刻み突き、逆突き、廻し撃ち(蹴り)、前蹴り、横蹴りなど、固有名詞の定型技法による一定不変の撃ち方である。その為にヴィービング、ブロッキング、受け、払いなど、固有名詞の定型技法による単純防御の対処法が求められる。

間接攻略とは、詠春拳、意拳、ジークンドウ、クラブマガや竹刀剣道、薙刀、銃剣道、フェンシング、刀槍剣棍の器械全般に用いられる戦闘方式である。
間接攻略は、構え(ファィディング・ポーズ=攻防の備え)の両手や器械を制圧してから撃つ、防御から攻撃に基づく攻防一体の闘方であるので、言葉による制限の「打撃」ではなく変幻自在である「攻略」と言う形容詞を用いる。
両手や器械への対処には、払い除く(拒否)と取り込む(包括)の対処方針がある。払い除ければ好いが、払ってもまた飛んでくるハエの例もあり、払い除くことは短絡的な対処とでしかない。
取り込むことは構え(相手)の両手や器械に自分の両手や器械を添え、相手の防御を攪乱し攻撃を牽制する。防御への攪乱妨害、攻撃への牽制誘導。即ち、取り込む包括である。

払い除くや取り込むにしろ、相手の両手や器械に触れなければならない。この触れる現象を「接触」と言い、物理的な事実は「交叉」である。 交叉=crossには、交叉する前のcrossingと交叉した後のcrossedがあり、 crossingは「接触連絡の交叉法」、crossedは「接続連結の交錯法」である。

「点の延長は線、線の遭遇は交叉、交叉の進化は螺旋」

「接触連絡の交叉法」は、片手から両手へと相手の両手に交叉接触し打撃を未然に防ぐ。交叉接触ができなければ直接な打撃しかなく、カタや技法の応用ができなくなる。
「接続連結の交錯法」は 、交叉が展開する交錯は螺旋である。螺旋は物体を制御する能力を有する。交錯接続の不備は、無防備な掴み掛かりや強引なタックルを行わせる結果になる。

 「接触連絡の交叉法」(crossing method)
 接触連絡 (contact)は打撃傾向:
 ?直接的な接触−技術 :点線技法 /戦術:直接打撃法−競技志向。
  様式 :ボクシング、空手道、ムエタイ、テッコンドウ…
 ?間接的な接触−技術 :交叉技法 /戦術:間接攻略法−武術思考。
  様式 :日本古武術、中国武術、クラブマガ、シラト…

 「接続連結の交錯法」(crossed method)
 接続連結 (connect)は投拿傾向:
 ?交叉する前 (crossing)−技術:交叉技法/戦術:攻防一体法−防禦の本質。
  様式 : 護身術、器械技撃を始め、投げ、関節技を含む武術全般。
 ?交叉した後 (crossed )−技術:交錯技法/戦術:投拿制御法−制御の原点。
  様式 : 相撲、ソウカク、合気道、柔道。 柔術、レスリング、サンボ、…

点の延長は線 (技術:点線技法 / 戦術:直接打撃法)、線の遭遇は交叉(技術:交叉技法 / 戦術:間接攻略法)、交叉の進化は螺旋(技術:交錯技法 / 戦術: 投拿制御法)。物理的な進行は流派や様式の隔たりをなくし、技術と戦術の入り交ざりを澄み分けるものである。

競技とは技術を競うことである、パンチの競技=ボクシング、キックの競技=テッコンドウ、キックとパンチの競技=キックボクシング、突きと蹴りの競技=空手道。投拿の競技は服装による行動制限(ルール)により、上下長袖の柔道、上長下短のサンボ、上短下長のソウカク、マワシ着用の相撲、パンツ着用のレスリングなどの競技方式がある。
技術を競う競技は技術の行使=攻撃が求められる。防御は注意!警告!の違反行為であり、競技には最低限の防御技術しか許されないのである。競技は勝つことに意義がある。勝てば拍手喝采と賞金名誉を博し、「自分を褒めたい」気分にもなれる。

武術:武とは戦争のための兵器や兵士。中国は「止・弋」である防衛の意味を持つ、術は技術、戦術のことである。即ち、武術は戦闘の技術と戦術と言うことが出来る。
戦闘の攻撃と防御は優勢と劣勢の相互関係にある。攻撃は防御に対し数倍のエネルギーを必要とし、防御は攻撃に対し「逸るを以て労を待つ」の利があり、攻撃よりも防御の方が有利である。
競技は攻撃が主体、武術は防御が基本。自身を守るのは自己の責任。有事に際しての状況は常に多勢に無勢、優勢に劣勢、刃物に素手。実戦に於いて競技志向よりも武術指向の方が実用的である。

  *弋は古代中国兵器。長柄(3−4m)の先端部に横刃を付けた兵器。「干弋」は戦争軍事を意味する。

「流派は武術の入り口、様式は戦闘の一部分である」。

流派の枠組みを越えなければ武術の本質を見出すことは困難であり、
様式の制約を取り除なければ戦闘の法則を行うことは不可能である。
接触連絡は交叉法・接続連結は交錯法。これは物理的な事実である。

                   接触交叉法の実践することにより、
                   接続交錯法への展開を可能にする。
                   流派の枠組みを越えた本質を究め、 Essence
                   様式規制を取り除いた法則を正し、  of
                   繰り返しの不変悪から進化を求む。 Evolution



推手とは
: 太極拳に伝わる搭手 (接続方法)の一つである。推手には片手交叉の単推手と両手交叉の双推手があり、武術修行者から老若男女の素人までが行いうる練習法である。搭手の対練法は太極拳の推手に限らず、上記の流派や様式全般に行われている重要な練習法である。


競技推手: 太極拳は陳式、楊式、呉式、武式、孫式などの伝統思想が根深いため保守的な傾向がある。どの流派も我流の“○○式推手”を固守し、百数十年たっても「太極推手」の公的な見解が明確ではない。よって、国家権力“指導”のもとで「競技推手」が制定されることになる。主観的な“○○式推手”よりも客観的な「競技推手」の方が信憑性あるのは当り前のことである。

競技は一定なルールのもとで技を競うことである。大衆普及を目的とする競技形態は、誰にも分かりえる最も簡潔なルールが必要となる。競技人口の底辺が広がれば選手の階層も自ずと深くなる。そして「競技推手」から「太極推手」さらに「太極散手」そして「武術応手」への進化も可能になる。

    競技推手−定歩単推手:ステップの移動 = 1点、転倒着地=2点。
          −活歩双推手:円周外への退去 = 1点、転倒着地=2点。

太極推手: 推手ルールの制定は「競技推手」の普及にはなるが、武術である「太極推手」への探究には限界がある。太極推手には太極拳の流派の数だけの主張や方式があり、流派権威で凝り固まった太極推手を究明することは困難である。流派の枠組みを越えなければ太極推手の本質を見出せない。流派は武術の入り口、道場はその学校である。流派に固執し学校を卒業できないのは、決して良い現象ではない。

太極拳の根源は「太極十三勢」にある。太極拳対練法の第一段階は搭手の「太極推手」である。よって「太極推手」が「太極十三勢」における位置づけと、その物理的な根拠が重要な課題となる。「太極推手」を研究するに当たりまず現状の確認をしておく必要がある。
太極拳の単・双推手において、双推手は膨・履・擠・按の四正であるのは周知のことであるが、その始まりである単推手になると、何がポイントなのか、目的は何なのか、明確な教義が記されていない。これは「太極推手」の教習体系が不備であったのか。或いは、研究者のために残された宿題なのか?それは人それぞれの判断に委ねる。

EOE蘇東成老師は「太極十三勢」を下記の通り消去法を使って分析する。 
「太極十三勢」から双推手-四正の膨・履・擠・按を差し引けば、残りは四隅の採・裂・肘・靠と五行の中・前・後・左・右となる。そして、「採」は摘み取ること、「裂」は引き裂くこと、「肘」は肘法のこと、「靠」は寄り掛ること。であるからにして、の要法も単推手の動きに当て嵌まらない。そうすれば、残された五行の中・前・左・右・後 (円環)は単推手の要法となる。

EOE単推手の五行には中・前・左・後・右の平面と中・左・右・上・下の縦面がある。それによって、直横 (中)・内横・外横・上横・下横の技術展開と中・前・左・後・右の戦術応用が可能になる。

              
   平面の円環五行       縦面の十字五行      立体の螺旋五行     戦術の螺旋包囲

太極拳の単・双推手に限らず、どんな型や技法も型・静態の姿勢と形動態の動作によって構成されている。型も形も練習するのは当り前ことである。根拠なき姿勢の重複や実証なき動作の反復は盲目的な空練であり、重複や反復は他の練習法を知らない”練習”である。

Essence of Evolution における交錯技法の初歩段階は太極推手である。 Essence of Evolutionの教習体系は、単・双推手における姿勢の根拠と動作の原理を明確にし、流派や様式の枠組みを越えた本質と原理の探究を行い、推手の単練法から対練法そして応用法の過程を提案し、武術三原則である防禦法、打撃法、制御法を習得することにある。
更に、「太極十三勢」の四隅である採法・裂法・肘法・靠法の諸法における、接触連絡の交叉法から接続連結の交錯法そして打撃試勁の撃練法の解明と実践を行い、武術三原則である防禦法、打撃法、制御法の習得を目指す。

接触連絡の交叉法 = 接触の過程=防禦の本質。一点交叉加算法、二点交叉平衡法、三点交叉螺旋法
接続連結交錯法 = 接続の段階=制御の本質。単手双手交錯法、求心遠心螺旋法、
内肘外肘三節法、靠撞箍抱貼身法

EOEにおける太極十三勢の展開 (EOE original)

   五行− 中・前・後・左・右。 四正− 膨・履・擠・按。 四隅−   ・   。      ・  
             ↓              ↓          ↓    ↓     ↓     ↓ 
           単推手            双推手       求心法 遠心法 内外肘 貼身法


  単推手の EssenceとEvolution
  セミナーの内容:
推手の展開は五行である。
  ?主題: 陣形 (構え)の形成。  目的:形式的な構えから戦術的な陣形へ。
  ?主題: 進化 (展開)の過程。  目的:主観的な固執から客観的な包括へ。
  ?主題: 接触 (交叉)の過程。  目的:プロセスは必然的な結果を導く。
  ?主題: 架式 (構え)の根拠。  目的:迷信盲従から実証自覚へ。
  ?主題: 五行 (方向)の展開。  目的:定型常態から反応進化へ。
  ?主題: 動態 (動き)の解析。  目的:形状認識から深層認識へ。
  ?主題: 用法 (応用)の構図。  目的:願望妄想から実践実証へ。


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